2020年11月17日

NHKテレビ「クローズアップ現代 ALS当事者たちの“声”」

たわしの映像鑑賞メモ043
・NHKテレビ「クローズアップ現代 ALS当事者たちの“声”」2020.10.14
この番組は、京都で2019年11月30日「ALS患者」嘱託殺人事件があり、そのなかで、「ALS」のひとたちが「同病」のひとたちとつながることによって、生きることにつながる番組を作ろうという主旨で作られた番組とわたしは汲みとっていました。VTRで、いろいろな当事者の紹介があり、スタジオで、母親を介護し看取った川口有美子さん(註1)がインタビューを受けていました。今、「ALS」のひとたちは、人工呼吸器を付けるとかなり長くいきれるのですが、着けないままに亡くなるひとが7割という統計がでているそうです。それは、「周りの人たちに迷惑をかけるからなど」という説明になっています。以前、8割だったのですが、7割になったのは、当事者・家族による運動のはっきりした成果、ということができると思います。以前は、自宅での生活となると、家族の全面介護だったのが、今は家族介護をほとんどしなくても、2012年から介護職で研修を受ければ喀痰吸引や胃瘻の注入が出来る制度を作り、24時間介護体制が作られつつあります。地域格差があるので、制度的な整備もこれから進んでいくよう、ただ、そもそも福祉制度一般にいえることですが、「仏作って魂を入れず」ということばがあるように、介助のひとたちが集まらないという現状をどうするのかという、福祉の抑止・軽視という福祉政策の問題があります。これらのことも含めて、運動として前に進めて、資源にアクセスすること、「障害の社会モデル」的意味で、障害をとりのぞいていくこと必要だと思っています。
とにかく、この番組を見た当事者や「障害者」たちがつながっていく契機、生きるということにつながっていく契機になるのではと、この番組の意義深さを考えていました。
ただ、ペシミストのわたしは(註2)、何か心の重いものを感じています。そもそも「迷惑」とかいう発想、それから「など」ということの意味を考えていました。
以前、フェミニズム関係の連続学習をしているときに、上野千鶴子さんの本を読み込んでいました。上野さんは、コピーライターのような刺激的な言葉を紡ぎ出しています。その中に、「定年退職をしたら、男は産業廃棄物になる」ということばがありました。この言葉には、フェミニズムを勉強しているひとたちにとって、男をやり込める痛快さがありました。それと、この社会の労働崇拝――労働第一主義ともいえるところへの批判の意味ももっていたのです。ですが、わたしは母の高齢の介護をして、母の「ぽっくり死にたい」ということばへのやりとりとか、母が利用していた病院や高齢者施設のショートステイやデイサービスの利用の際に「リビングウィル」を求められているなかで、この上野さんのことばの恐ろしさを感じていました。今、統計では「延命処置をしない」と答えるひとが8割いるそうです。そして、母を看取った後、母の介護の反省と「障害者運動」での必要性も考え、そして介護学習の実態を知りたいという思いもあって、民間の商業ペースの講習会を受けたのですが、その中で、すでに介護を仕事にしているひとも含んだ「実務者コース」の講習会で、講師が講習生に「自分が延命処置を受けたくないひと」と手を上げさせたら、丁度8割でした。その講師の話では、毎年その質問をしてだいたい毎年8割だそうです(註3)。このことが、「など」というところの問題、この社会の一般的な価値観にとらわれていくことがあるのだと考えていました。
さて、この放送が終わった後、川口さんが自分のフェイスブックにこの番組の裏話を書いていました。「安楽死」という言葉を使わないで欲しいという提起があったとか、二回もリハーサルをしてから生本番に臨んだようです。いろいろ後で、視聴者から批判が出てくることを考えているのでしょうか?
この番組はテーマをはっきりさせて、そこに絞り込むというところで、それはそれで意義深い番組だったのですが、もっと掘り下げた番組も期待したいと思っています(註4)。いつものわたしのないものねだりです。


1 その看護記録、わたしの読書メモ85・川口有美子『逝かない身体―ALS的日常を生きる』医学書院 2009
2 大江健三郎さんが、「さよなら原発」の集会で、「ペシミストの勧め」の話をしていました。運動をするひとは、現状を憂うるペシミストだからこそ、運動に参加しているのだという話です。
3 たまたまなのでしょうが、この8割という数字があちこちに出てきます。
4 次の映像鑑賞メモでこのあたりのこととりあげています。


posted by たわし at 05:02| 映画鑑賞メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする